栄養士の山部です。
先日は、食×心×カラダにご参加くださいましてありがとうございました。
ご質問があった「更年期症状を軽減する為の食生活は?」についてです。
39の食品やサプリメントに関する研究報告が見つかりました。ですが残念なことに、更年期症状の改善については効果が見られない、または根拠が不十分とされており、ヒトでの有効性・安全性が確認されているものは、ありませんでした。
ホットフラッシュなどの更年期症状が改善したという前向きな情報は、ホップ抽出物、松樹皮抽出物、メラトニン(松果体ホルモン)で見つかりました。しかしながら、サプリメントでの高濃度摂取は危険性が高いという評価でした。日本未認可なものもありますので、お勧めしません。
39項目:大豆、葛、キヌア、ザクロ、アルファルファ、ヤムイモ、プラセンタ、プエラリア、ローヤルゼリー、イソフラボン(大豆・葛・レッドクローバー・甘草)、イチョウ葉エキス、高麗人参、ブラックコホシュ、チェストツリー、バレリアンほか、ハーブ、香辛料
そこで、ひとつのアイデアとして、メラトニンの材料となる成分を含む食品をお試しになられてはいかがでしょうか。「トリプトファン」という必須アミノ酸は、メラトニンの材料になります。
トリプトファンは、肉(特に鶏肉)や魚に多く含まれます。苦手でなければ、魚肉ソーセージもお勧めです。他には、パスタ、チーズ、ヨーグルト、納豆、木綿豆腐、ナッツなどに多く含まれています。召し上がるタイミングは、空腹時の朝食、または朝食後2時間ほど時間をおいてからの間食となさってください。
そして、トリプトファンの吸収効率を良くするために「糖質」「ビタミンB6」を一緒に召し上ることをお勧めします。ビタミンB6は、マグロ、カツオなどの魚に多く含まれます。他に日常的に使いやすい食材では、酒粕、鮭、ささみ、バナナ、プルーン、アボカド、サバ缶、ツナ缶、きな粉、ピーナッツバターもお勧めです。朝食の定番になるようなものをお選びください。
トリプトファンのサプリメントでは、いくつかの副作用が起こる可能性があります。鎮静作用のある医薬品やハーブ、サプリメントとの併用はお控えいただくか、医師または薬剤師に飲み合わせをおたずねください。
以上、可能性の範囲でのお答えになりますが、お役立ていただけましたら幸いです。
症状があまりにお辛ければ、婦人科でホルモン補充療法や漢方療法、安全に使用できるサプリメントについて相談なさるのが良いと思います。診察や血液検査により、症状の原因を更年期障害に特定することができれば、保険適応になる薬剤もあります。
ホルモン補充療法にはどのようなリスクがあるのかなど踏まえて、色々なことを十分おたずねになり、良策が見つかりますことを願っております。ご質問ありがとうございました。
追記. メラトニンは、イランのシーラーズ医科大学の研究で、対象数200名は、そこそこの規模です。ご参考までに、要約を紹介します。
論文を読みましたところ、メラトニンの強力な抗酸化作用が卵巣の老化プロセスを遅らせて閉経開始時期に関与するかもしれないという記述はありましたが、その他だいたいをまとめますと、入眠時の芯熱(体温)や覚醒状態を静めることでもたらされる安眠により対症的に有効であったということが書かれていました。メラトニン作用を応用した不眠症治療薬がありますし、この研究も直接的にホルモン分泌を左右するというよりは、睡眠障害を改善し「体内時計を整える」ことで、ホルモンバランスを良くするという間接的アプローチだと、私は思います。食べ物からのトリプトファン摂取が午前中ということに関しては、消化吸収のための時差だとお考えください。
-以下、ご参考(メラトニン研究論文の要約の要約)-
タイトル:閉経期女性の更年期症状に対するメラトニンの効果(臨床試験、無作為化比較での二重盲検法)
対象者:閉経後の女性(40〜60歳)240名
方法:無作為方式で介入・非介入の2つにグループ分けし、3ヶ月間、介入群には毎晩3mgのメラトニン錠を1錠、非介入群にはプラセボ(薬理効果のない偽薬)を、投与した。投与は就寝前の18:00~21:00とし、真っ暗な部屋で就寝した。1ヶ月毎に、更年期症状の変化と薬剤合併症の有無を測定した。
結果:閉経後の女性、介入群99人、非介入群(対照群)101人のデータを分析した。メラトニンを投与した介入群では、更年期症状スコアは、最終的に35.73±11.6から17.09±10.22へ減少した。日数にかかわらず、2つの群を比べると有意差があった。日数の経過により、更年期症状の程度にも有意差があった。副作用(おもに、眠気・吐き気・嘔吐・頭痛)には有意差がなかった。3ヶ月間以上の長期的なメラトニン使用の安全性および有効性に関して信頼できるデータはなく、さらなる研究が必要である。
結論:研究結果は、メラトニンの使用が更年期症状を改善することを示した。
以下、論文のアドレスです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4441894/